低速モータ入門|DCモータで低速回転を実現する手法

低速モータとは

低速モータは、その名のとおり、低い回転速度で動作するモータのことをいいます。モータの種類や用途、使用環境によって定義は異なりますが、このコラムでは回転速度が1rpm(revolutions per minute:1分間の回転数)から2,000rpmまでのモータを指しています。

この低速モータは、高いトルクを必要とするアプリケーションや、精密な位置制御が必要な場面で使用されます。例えば、工場の自動化機械やロボット、ポンプが備えられている医療機器、ラジコンカーなどのホビー用途などが挙げられます。

低速モータに求められるもの

一般的に低速モータには、高トルク、精密制御、そして直接駆動などが求められます。これらの要求は、様々な産業やアプリケーションで重要となります。高トルクは、大きな負荷を扱う場合や、急速な加速・減速が必要な場面で重要な特性となります。

精密制御は、位置や速度の正確な制御を必要とするアプリケーションで重要となります。そして直接駆動は、伝達機構を使用せず、効率的でかつ低振動での動作を実現する際に重要となります。

高トルク

高トルクが要求される事例として、自動ドアの開閉機構や自動車の電動ウィンドウのようにモータが始動する際に負荷がかかる製品が挙げられます。これらに使用する低速モータは始動した際に高いトルクを出力することが求められます。

また、重いものを搬送するコンベアやリフトに使用されることもあるため、高いトルクが維持できることも要求されます。この高トルクを実現するためには、モータの磁束密度を大きくする設計や、高い巻線効率を実現する設計が求められます。これにより、モータの設計や材料選定が複雑化します。

精密制御

精密制御が要求される事例として、モータの回転エネルギーを直線駆動に変換する電動アクチュエータなどがあります。電動アクチュエータはロボットの関節に使用されることがあり、精密な動きをロボットに要求する際には、モータ自体も精密に制御する必要があります。

この精密制御を実現するには、高分解能のセンサーと、高いリアルタイム性を持つ制御アルゴリズムやプログラムが必要になります。また、モータの構造や磁気設計を最適化することで、精密な位置決め制御や速度制御が実現できます。

直接駆動

直接駆動が要求される事例として、製造ラインに使用される搬送用機器のモータや、モータの試験を行う試験機があります。この直接駆動は、モータと負荷との間に機械的な伝達機構がないため、慣性や伝達機構を介することによる遅延が少なく、高い応答性が実現でき、低振動での動作を実現することができます。

他方で、負荷とモータが直接つながる状態であるため、負荷によるトルクの変動や、モータ自体の慣性モーメントの影響を考慮した設計が必要となります。

DCモータを使って低速回転を実現する方法

DCモータを低速で制御する方法として、インバータ制御によるパルス幅変調(PWM)制御、モータ自身に機械的な機構を設ける方法のギアリダクション、電源の電圧を制御する電圧制御が挙げられます。

パルス幅変調(PWM)制御

PWM(Pulse Width Modulation)制御では、電源電圧を一定にしておき、モータに印加する電圧を短いパルスで供給し、そのパルスの幅を変えることで電圧を制御します。これにより、低速でのスムーズな回転が実現できます。

さらに、低速モータにPWM制御を採用することで、電圧が変動する際のコンデンサの充電と放電の時に流れるリップル電流を小さくすることができ、効率的な電力利用が可能となります。

ギアリダクション

ギアリダクションは、モータに減速機を組み合わせて低速回転を実現する方法です。減速機の減速比を選択することで、モータの高速回転を低速高トルクな出力に変換します。そのため、低速で大きなトルクが得られます。バックラッシの小さい減速機を使用することで精密な制御が可能になります。

さらに、このギアリダクションは、モータのみでトルクを出力する場合よりも、モータと減速機の組み合わせではあるものの、小型化を実現することができます。なお、ギアリダクションは出力軸の方向によって、平行軸型と直行軸型があります。

ユニテックの低速モータは主にこのギアリダクションを使用しています。既存構造で可能な限り低速回転を実現しつつ、トルク値が充足すれば、定格回転数を低速に設定する方法を採用しています。ユニテックでは、これまでに以下の特性の低速モータを制作しています。

製作例1:電圧DC24V/定格出力11W/定格トルク0.39Nm/定格回転260rpm/定格時間:連続
製作例2:電圧DC75V/定格出力31W/定格トルク1.0Nm/定格回転数320rpm/定格時間:連続

電圧制御

電圧制御は、モータに供給される電圧を調整することで回転速度を制御します。低速での運転を実現するためには、低い電圧をモータに供給します。これにより、低速での安定した回転とトルクの出力が可能となります。電源電圧を直接制御し回転数を設定するため応答性がよい制御方法となります。

低速DCモータの用途例

低速DCモータは多岐にわたる用途で使用されます。自動化機械、ロボット、医療機器、ホビーなどがその代表的な例です。

自動化機器

自動化機械においては、低速DCモータがコンベアベルトやコンベアローラーの駆動に使用されます。工場の製造ラインや物流センターなどでの製品の移動や仕分けで重要な役割を果たしており、工場の省人化や生産性の向上に寄与しています。

ロボット

ロボットの関節部やロボットアームの先端に取り付けられ、掴む、加工するなどの動作をするエンドエフェクターの駆動にも低速DCモータが使用されます。これにより、ロボットの動作がスムーズに制御され、精密な作業や操作が可能となります。

特に、エンドエフェクターに使用する低速DCモータは、掴む対象物の硬さや重さによって力の強さを調整することが重要であることから、低速高トルクの低速DCモータによりトルクの調整が実現でき重要な役割を果たします。

医療機器

人工透析装置や輸液ポンプのような医療機器に、低速DCモータがポンプや吸引器などの駆動に使用されます。また、回診車等に使用されている移動式の健診機器にも低速DCモータが使用されています。

低速で安定した高トルクが出力できる低速DCモータを使用することで、医療処置や診断装置の正確な動作が確保され、患者への安全性と信頼性を高めています。

ホビー

ホビー用途では、ラジコンカー、模型飛行機、模型船などの駆動に低速DCモータが利用されます。低速DCモータの具体的な使用例として、操舵を必要とする際に使用されることが多く、ラジコンカーでいえば、タイヤの向きを変えるために使用します。

ホビー用の低速DCモータは趣味としての楽しみもあれば、プログラミング学習のために使用されることもあります。

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