医療の進歩に伴い、病気の検査・予防・治療、あらゆるシーンにおいて、さまざまな機器が日々開発され、治療の選択肢が増えている現代。実は、そんな医療の発展にモータも一役買っています。
中でも、「定量ポンプ」と呼ばれる機能を持つ医療機器は、その心臓部にモータが使われています。医療現場において、「決まった量の薬」を「決まった時間」で正確に投与することは、患者様の命を守る上で非常に重要です。これを行ってくれるのが「定量ポンプ」と呼ばれる装置です。今回は、医療向け定量ポンプの種類と、そこで使われるモータ、そして医療用ならではの求められる厳しい性能について見ていきましょう。
Contents
医療向け定量ポンプの種類と使われているモータ
定量ポンプと一口に言っても、用途によっていくつかの種類に分けられます。そして、その用途に合わせて最適なモータも変わってきます。

シリンジポンプ
注射器(シリンジ)のお尻、押し込む部分(プランジャー)を、手で押す代わりに機械が押してくれる役割をもったポンプです。 麻酔薬など、微量で、かつ高い精度での投与が必要な場合、人間の手で注入するには精度に限界があるため、この装置の出番となります。ボールネジや送りネジと、モータが組み合わされることにより、回転運動が直線運動に変換され、プランジャーを押す、という動作を実現しています。ここで使われるモータは、ステッピングモータが主流です。
ステッピングモータは、例えば「右に〇〇度回りなさい」という指令(パルス信号)に対して、きっちりとその通りに回転する特性を持っています。シリンジを押す距離=モータの回転量がそのまま注入される薬の量になりますので、「指示した通りに動く」このモータは、非常に相性が良いモータといえます。
輸液ポンプ
薬液が入ったチューブに、ローラを押し付けてしごくような動きを与えることで、薬液を送りだす仕組みをもつポンプです。シリンジポンプよりも多くの量の液を、長時間送る際に使われ、人工透析などで活躍しています。DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータなどが使われます。高い精度が求められない場面では、制御がしやすく多機能化も容易なDCモータが使われることが多いです。
しかし、より高い精度が求められる上位機種になると、回転を細かく制御できるステッピングモータや、センサーで常に状況を監視しながら動くサーボモータが選ばれます。求められる機能に応じて、選ばれるモータも変わります。
インスリンポンプ
糖尿病の患者様が、持ち歩くタイプの超小型ポンプです。常に携帯する必要があるため、「小さいこと」「軽いこと」が求められます。サイズ感としては500円玉レベルの、超小型DCモータや、超小型ステッピングモータが使われます。セットで使われるバッテリーのサイズも小さいため、消費電力が極少ない省エネ仕様モータとなっています。
モータを小型化・高効率化する技術は年々進んでおり、小さなボディでも必要な力を出せるよう、磁石、コア材、コイルなど、材料レベルから開発が行われています。さらには構造・形状はもちろん、組み立て工程にもさまざまな工夫が盛り込まれ、必要な性能を成り立たせています。
医療向けポンプモータに求められる性能
医療機器に使われるモータは、ただ回れば良いというものではありません。人の命に関わる装置ですので、産業用やおもちゃ用とは比べ物にならないほど厳しい性能が求められます。具体的にどんな性能が必要なのでしょうか。

高精度制御性能
医療において体内に薬液を投与する際、薬液の種類によっては、その分量がものすごくシビアなものが実際にあるようです。もしも、「薬液を1時間に10ml入れる」と設定したのに、実際は20ml入ってしまったなんてことが起きれば、大きな医療事故につながりかねません。精度の高い挙動が求められることは、ご理解いただけるかと思います。
求められる機能を満たすためには、負荷(チューブの硬さ、液体の粘度、その他外乱の影響)が変動したときでも、回転速度がフラつかない高い制御性能が求められます。エンコーダ等のセンサーで回転状態を監視し、ズレがあれば即座に修正するフィードバック制御などが重要になります。また、こういったシビアな精度が求められる装置の場合、モータの挙動だけではなく、モータの回転運動を伝える機構全体の精度が不十分では、医療機器として成り立ちません。
薬液を送り届けるシステム全体としての精度が求められるため、機構部とモータとの連携がきちんと取れる設計が必要となってきます。具体的には、送りネジの移動量や、チューブを押し出すローラなどの寸法公差・調整機構など、精度を高めるためにはさまざまな要素に目を向ける必要があります。
安全性
医療機器においてやはり外してはならないのが安全性の観点です。想定と異なる回転運動が発生した場合、それを検知してエラー信号を出すという挙動が重要です。モータが想定の回転数を出せなくなった、回転が止まってしまった、などの異常は、薬液を送り出すチューブが折れ曲がって負荷が高まった、チューブの中に異物が入り込んで詰まってしまったなどが原因として考えられます。
モータが動かなくなるほどの負荷がかかってしまった場合(ロック状態)、無理に回し続けようとすると、回路がショートしたり発火したりする恐れもあります。 これを防ぐため、モータに流れる電流を監視し、異常があればすぐに検知して停止させる「電流制御」などの機能が必須となります。異常を素早く知らせて、安全に止まる。これもモータシステムの大切な役割です。
静音性・低振動
ポンプは病室や、集中治療室(ICU)で使われることも多いです。静かに休んでいる患者様の枕元で、モータがウィーン、ガタガタと音を立てていては、安眠を妨げてしまうだけでなく、怖い印象を与えてしまうことにもつながります。そのため、可能な限り静かに、振動なく回ることが求められます。
振動・騒音の原因となるギヤ機構は使わずダイレクト駆動にしたり、滑らかに回るような電気制御を行ったり、コギングトルクを小さくするための磁気設計など、静音化への対策は欠かせないポイントです。
小型・軽量・省電力
特にインスリンポンプのような持ち歩くタイプや、バッテリーで動く移動用のポンプでは、電池が長持ちすることが重要です。モータの電力効率を良くすることは、バッテリーを長持ちさせることに直結します。限られたエネルギーを無駄なく「回る力」に変える高効率な設計が求められます。
長寿命・高信頼性
医療機器においては「長く使えて故障が少ない」ことが重要であることは、ここまでの話でご理解いただけると思います。そのため、長期間安心して使い続けるために、摩耗する部品である「ブラシ」を使わない、ブラシレスDCモータの採用が増えています。ブラシ交換の手間もありませんし、摩耗粉も出ないため清潔です。
さらには、寿命に大きく影響する部品のグレードを上げるなどの対応が取られることもあります。具体的には、機構部品のベアリング、制御回路のコンデンサなど。モータとしての寿命を伸ばす設計手法が取られます。
医療向け定量ポンプモータならユニテックにお任せください
医療向けポンプは、汎用品のモータをポンとつけて終わり、というわけにはいきません。「もっと静かに」「もっと小さく」「もっと安全に」。そんな厳しい要望に応えるためには、専用のカスタマイズが必要になることもあります。
ユニテックでは、お客様の医療機器の仕様に合わせて、最適なモータをイチから設計・製造することが可能です。 ぜひ私たちにお手伝いさせてください。ご相談をお待ちしております。

