モータの活躍の場は、多岐にわたります。エアコンや洗濯機といった身近な家電製品から、今この記事をご覧いただいているスマートフォンやPC。さらに、自動車や飛行機はもちろん、ロケットなどの宇宙航空分野にまで広がっています。

このように、モータは実にさまざまな領域で使われています。そして、その使い方次第で、あらゆる「動き」を生み出すことができます。

分野や用途に応じて、モータを精密にコントロールするための技術が数多く開発されてきました。こうしたモータの動きを高度に制御する技術は、「モーションコントロール」と呼ばれています。しかもその技術は、今なお進化を続けています。

今回は、モータの「動き」を支えるモーションコントロール技術について、詳しく見ていきます。

モーションコントロールとは

一般的にモータと聞くと、「回る」というイメージを持つ方が多いでしょう。たとえば自動車のように、「タイヤを回す」という用途は直感的に理解しやすい例です。

しかし、「回す」というのはモータの役割のほんの一部にすぎません。実際には、さまざまな用途で高度な動きを担っています。

例えば――

  • 工場の自動化装置:ベルトコンベヤを一定速度で動かす、荷物を適切な力でつかむ
  • 産業用ロボット:アームを正逆方向に滑らかに動かす、ネジを正確に締める
  • 医療機器:チューブ内の薬液を安定した速度で送り出す
  • 半導体製造装置:ウェハを高精度に搬送する

このように、モータで動く多くの装置は、「ただ回る・動く」だけでは成立しません。

求められるのは、決められた位置に、決められた速度で、なめらかに、そして繰り返し正確に動くこと。こうした高度な動作を実現しているのが、モーションコントロール技術です。

モーションコントロールとは、モータの動きを時間軸まで含めて精密に制御する技術の総称です。単なるON/OFF制御や回転数の調整だけでは、これらの装置は成り立ちません。

「いつ動き始めるのか」「どのように加速するのか」「途中でどう振る舞うのか」「どのように止まるのか」
その一連の動きを設計どおりに制御する技術なのです。

モーションコントロールで制御するもの

モーションコントロールでは、主に次の4つの要素を制御します。

位置制御

モータや機構を「どこまで移動させるか」を制御します。

停止位置の精度が重要となるため、エンコーダと呼ばれるセンサーが不可欠です。エンコーダは、モータの回転方向や回転軸の現在位置(角度)を検出します。そして、その情報をもとに次の動作を決定するフィードバック制御が行われます。

代表例は、ロボットアームの先端位置決めやステージ装置の位置決めです。

3Dプリンタが細かく動きながら樹脂を積み上げていく様子を見たことがある方も多いでしょう。あの精密な動きも、位置制御によって実現されています。

速度制御

一定の速度で動かす、あるいは指定した速度に正確に追従させる制御です。

モータにかかる負荷が変動しても、速度を維持する必要があります。そのため、速度変化を検知し、補正するフィードバック制御が用いられます。

コンベヤや搬送装置では特に重要です。荷物を載せたら減速し、降ろしたら加速する――そのような挙動では安定した搬送はできません。常に一定速度を保つことが求められます。

加減速制御

動き始めと止まり際の挙動を制御します。

例えば電車は、発進時も停止時も緩やかに加速・減速します。急加速や急停止をすれば、乗客は大きく揺られ、安全性が損なわれます。

機械装置でも同様です。急激な速度変化は、振動や衝撃、騒音、位置ズレの原因となります。それは装置への負担になるだけでなく、周囲環境にも悪影響を及ぼします。

精度と耐久性を両立させるために、適切な加減速カーブの設計が不可欠です。

トルク制御

モータが発揮する「回す力」がトルクです。

トルク制御とは、この力そのものを目標値として制御する方式を指します。

例えば、ネジ締め用の電動ドライバーでは、必要なのは回転数ではなく「適切な締め付けトルク」です。材料の硬さや摩擦条件が変われば、回転数が一定でも締め付け力は変動します。

最終的な品質を左右するのは速度ではなくトルクです。トルクを直接制御することで、締め過ぎや締め不足を防ぐことができます。

より正確に、なめらかに動かすためのモータ技術

モーションコントロールの性能は、制御アルゴリズムだけで決まるものではありません。

モータそのものの特性、機械構造、周辺環境――それらすべての積み重ねが、最終的な「動きの質」を左右します。

ここでは、その代表的な要素を見ていきます。

トルクリップル(回す力のムラ)を減らす

理想的には、モータは回転中どの角度でも一定のトルクを出力してほしいものです。

しかし実際には、回転角度によってトルクにムラが生じます。これをトルクリップルと呼びます。

トルクリップルは、振動・騒音・位置決め精度の低下につながります。

そのため、

  • 永久磁石の極数や配置の最適化
  • 巻線仕様やコアスロット数の設計
  • 電流波形の最適化

といった工夫によって、リップルを抑える設計が行われます。

ただし、最適解は用途や目標出力(回転数・トルク・電源電圧)によって変わります。単純に「これが正解」とは言えない設計パラメータです。

角度・位置検出精度を高める(エンコーダ/センサ)

制御精度は、「どれだけ正確に状態を検出できるか」に大きく依存します。

高分解能エンコーダや高精度センサを用いれば、微小な位置ズレや速度変化も検出可能になります。結果として、より細かな補正が可能になります。

近年では、モータ内部にセンサを内蔵した一体型構成も増えています。外乱の影響を受けにくくなり、より安定した制御が実現できます。

機械要素の弱点を制御側で補う(剛性・摩擦・バックラッシ)

機構部には必ず、たわみ・摩擦・バックラッシ(ガタ)が存在します。

これらは制御上の誤差要因になります。

そこで、

  • 高トルクモータの採用
  • 応答性の高い制御との組み合わせ

といった方法により、「余裕のあるトルク」と「瞬時の補正」を実現します。機械側の弱点を、モータと制御で吸収する設計思想です。

熱による特性変化を抑える

モータは発熱体でもあります。

温度上昇が大きくなると、磁石特性や巻線抵抗が変化し、制御計算とのズレが生じます。その結果、トルクや位置精度に影響が出ます。

これを防ぐために、

  • 温度特性を考慮した材料選定
  • 放熱設計
  • 温度補正を組み込んだ制御

などが必要です。

長時間安定して動作させるためには、熱設計は避けて通れません。

電磁ノイズ・電源品質を管理する

精密制御では、微小なノイズも精度悪化の原因になります。

電磁ノイズはセンサ信号を乱し、電源の揺らぎは制御の不安定さを招きます。

そのため、

  • ノイズ対策設計
  • 安定した電源供給
  • 適切なグランド設計

まで含めて初めて、安定したモーションコントロールが成立します。

モーションコントロールに関するFAQ

なぜ制御を頑張っても低速でガクガクするのか?

減速機を使わず、モータ単体で滑らかな回転を低速で実現することは、一般的には非常に難しいとされています。
制御の問題というよりモータ側の仕様が支配的であることが主な理由です。低速であればあるほど、コギングトルクやトルクリップルが大きく影響し、単位時間あたりの回転力の変動(揺れ)が大きく、これが速度リップルとして表に出ます。
加えて、エンコーダ分解能や速度推定が低速域に十分な性能をもっていないと微小な速度変化が現れやすくなります。低速での滑らかな回転を求める場合、減速機を用いるか、モータ内部のスロットコンビネーション、永久磁石の磁力の変更など、モータ内部のハード面の調整が必要です。

コギングトルクはどこまで下げるべき?

どこまで下げれば良い、という明確な指標は無く、実際の用途における最低速度や微動領域から逆算して決めるのが現実的です。
最終的には実機で低速回転させたときの速度安定性や、外乱との兼ね合いなどで判断するほうが確実です。
特に低速や微小送りを重視する用途では、わずかなコギングでも挙動の粗さに出る、ということもあります。
このように、コギングトルクは低速挙動に影響するのでよく確認が必要です。

スキューは入れるべき?トルク低下が心配

滑らかさを重視するならスキューは有効な選択肢です。スキューはコギングや高調波トルクを平均化しやすく、低速域の質感改善に直結します。
一方で平均トルクや効率の低下は無視できないレベルであり、また製造面で難易度やコストが上がることがあります。モーション品質を価値として出す製品なら、トレードオフを理解したうえで採用する意味は大きいです。

高分解能エンコーダを付ければ全部解決する?

解決するとは限りません。高分解能エンコーダは挙動を細かく見えるようにしますが、コギングや摩擦といった根本原因は残ります。
さらに、エンコーダの芯ブレや取り付け精度、ノイズ環境が悪いと、むしろ微小領域での速度揺れや停止の不安定さが目立つこともあります。

ロータの慣性モーメントは小さいほど良い?

小さければ良いわけではなく、負荷とのバランスで最適が決まります。
慣性モーメントが小さすぎると指令に過敏になり、微小なトルク変動でも揺れが出やすくなります。逆に大きすぎると応答が鈍くなり、追従性が落ちます。負荷慣性比を意識して慣性モーメントを設計すると、制御調整の難易度も下がりやすくなります。

トルクのばらつき(個体差)は制御で吸収できる?

磁石や巻線のばらつき、抵抗の温度変化、磁束の温度依存など、出力トルクに影響する項目は多数あります。
制御プログラムの作り込みによって、ある程度のばらつきを吸収することは可能です。
しかし、量産品質として安定性を確保するのであれば、それだけでは不十分です。
設計段階における材料選定や仕様設定の時点で、ばらつきの少ない構成とすることが重要です。さらに、組み立て工程において検査工程や調整工程を設け、個体差を抑えるためのプログラム調整を組み込む必要があります。
設計・製造・制御の各段階で対策を積み重ねることが、モーション品質の安定につながります。

軸受の違いは、モーションコントロールにどれほど影響する?

低速・微動では大きく影響します。
軸受やシール、グリスの組み合わせによって静止摩擦が増えると、動き出しが不連続になりスティックスリップが発生しやすくなります。モータとしてのトルク出力が安定しているはずなのに、滑らかな動きができないケースでは、軸受周りの設計や組立条件が原因になっていることが少なくありません。

振動や共振は制御側の問題では?

根本は機械設計で決まる部分が大きいです。
固有振動数が低かったり減衰が不足している構造は、制御では調整しきれない状況になることもあります。ロータのバランス、シャフトの剛性、カップリングや取付面の剛性などを整えて、共振しにくい土台を作ることが優先になります。制御はその上での最後の整形に近い役割です。

温度上昇はモーションコントロールの精度に影響する?

影響します。特に精密用途では無視できません。
温度上昇で巻線抵抗が変わると電流制御の余裕が変化し、磁束の温度依存でトルク定数も変わります。さらに構造体の熱膨張は位置ズレとして現れます。損失低減、放熱経路の設計、温度センサの活用など、熱設計をモーション品質の一部として扱うことで、よりよい製品に繋がります。

モータ単体評価で何を見ればよい?

カタログ値よりも、使用予定の速度域の速度安定性、トルクリップルの実測、温度変化時の特性変化量、軸受回転トルクなどを見れば、品質を掴めます。
特に低速での速度揺れは実機でしか分かりにくく、低速での使用を想定している場合は、注意が必要です。

「制御で何とかしてください」と言われたら?

まず制御で改善できる範囲と、設計側でしか解決できない範囲を切り分けるのが重要です。
共振の一部抑制や補償で改善できることはありますが、コギングや摩擦起因の不連続、バックラッシやガタが支配的な問題は制御だけでは根治しにくいです。原因がどこにあるかをデータと現象から説明できる状態にしておくと、責任領域も明確になります。

モーションコントロールに強いモータ設計者とは?

電磁設計だけにとどまらず、機械要素や制御まで含めて「すべてがつながって一つの製品になっている」と捉えられる設計者です。
モータ単体の特性を深く理解していることは前提です。しかしそれだけでは十分ではありません。実機に組み込まれた状態で発生する振動、温度変化、応答遅れ、位置ズレといった現象を、測定データから読み解き、根本原因を特定できる力が求められます。
つまり、電磁・機械・制御を切り分けて考えるのではなく、相互作用として理解できること。そこに強みがあります。

モーションコントロールならユニテックへご相談ください

モーションコントロールは、制御理論・モータ技術・機械設計・電気設計など、さまざまな要素が重なり合って成立する総合技術です。

ユニテックでは、それぞれの技術を個別に扱うだけでなく、用途や課題に応じて最適に組み合わせたソリューションをご提案しています。

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