「水力発電」と聞くと、ダムを思い浮かべる方が多いと思います。ダム内に水を大量に貯め、高いところから一気に落とす。この落下時の強力なエネルギーをもった水をタービンにぶつけ、回転させます。回転するタービンの中心軸は発電機(モータ)につながっており、回転エネルギーが電気に変換されます(発電現象)。タービンというのはイメージ的には水車のようなもので、水車に上から水を流すと回る、というのと同じような構造です。豊富な水資源を持つ日本においては、発電量の一部はこのような大規模ダム式水力発電によってまかなわれています。
これに対し、もっと小規模な水力発電である「小水力発電」。同じ水を利用した発電方法なのですが、日本国内では、新エネルギー法によって最大出力1,000kW以下の水力発電を「新エネルギー」と認定している関係で、1,000kW以下の水力発電を「小水力発電」と呼んでいます。
具体的には、川や農業用水路、上下水道を利用するもの、ビルや工場内の配管を利用するものまで、水の流れのあるところでさまざまな形で設置されています。原理的には、大規模ダムと同じように高低差を利用した回転力を利用するものもちろんありますが、単純に水の流れの中に水車を設置し、その回転力を利用するタイプもあります。小水力発電は、当然ながら出力は大規模ダムに比べると劣りますが、下記のような数多くの利点があります。
- 既存の水路や小川を利用するため、ダムを新しく作らずに済み、環境負荷が小さい
- 地域の自然条件を活かして「地産地消型」の電力利用が可能
- 太陽光発電のように天候の影響を受けにくい
生み出された電力は、売電されて各家庭に利用されたり、地元の山間部での獣害対策設備、農業用のポンプやビニールハウスの加温などに使われたりします。

Contents
小水力発電で使われる発電機に求められるもの
モータと発電機は原理的に同じものであることは周知のことと思います。両者は使い方が逆であるため、モータとして優秀なものが、そのまま発電機としても優秀とは限りません。なかでも今回取り上げる小水力発電には、どのような性能が求められるのでしょうか。みていきましょう。
低速でも効率的に発電できる設計
モータの一般的な回転数は、遅くとも1,000rpm(1秒で約17回転)程度です。しかしどんなに早い流れの川や用水路に発電機を設置したとしても、水流によって回される水車の回転数はここまで多くなく、ゆっくりになりがちです。そこで、低速でも効率的に電圧が発生できるよう、構造を工夫する必要があります。発生する電圧は、回転数の他に磁石の極数・磁束・モータコアのコイル巻数が影響します。これらのパラメータを適切に設計することが重要です。
可変速に合わせた電気回路の作りこみ
小水力発電が設置される環境は、水量が日々変わり、回転数も一定ではなく、可変速が基本です。この状態では回転に伴って発生する電圧が常に変動してしまうため、非常に扱いづらいことになります。そこで、発生した電圧を一度直流に整流し、インバータで目的の電圧・周波数に再変換して利用するといった、電気回路をセットで構成する形がよく使われています。
屋外利用としての性能
小水力発電機は屋外での連続運転が望まれます。そのため、防水防塵・腐食対策・長寿命ベアリング・発熱対策など、なるべくメンテナンスを必要としない保守性が求められます。モータ構造に関してはもちろんですが、配管・水車・配線まで含むシステム全体の健全性・堅牢性が求められます。
水車‐発電機内部直結構造
ギヤを介さずに発電機内部のモータ部に水車を直結できると、構造が簡単となりロスも減ります。内部の回路部品や、防水構造の仕組みなど、さまざまな要因が絡むので、必ずしも直結構造が取れるわけではありませんが、ダイレクトに水流のエネルギーを変換したほうが発電効率は高いといえます。
通常の水力発電で使われる発電機との違い
大規模な水力発電では、同期発電機と呼ばれる種類がよく使われます。これは励磁用の電源が必要となりますが、安定した大電力を作るのに適しています。
(永久磁石を使用せず、代わりに電磁石を使う構造です。電磁石を機能させるための励磁用電源が必要となりますが、この電源でコイルに流す電流を調節することで、発電電圧を一定にできます)
一方、小水力発電では「設置コスト」「保守性」「自立性」などが重要になるため、大規模発電と同じ方式は必ずしも最適とはいえないところがあります。そこで、小規模向けに取り扱いやすい発電機の仕様が採用されることが多いです。
小水力発電で使われる発電機の種類

永久磁石同期発電機(PMSG)
ロータ(回転子)に強力な永久磁石を埋め込み、ステータ(固定子)のコイルと磁力の相互作用で電気を生み出します。永久磁石を使っており、励磁装置が不要です。そのため、単独運転が可能で、小水力発電目的では扱いやすい発電機となっています。また、永久磁石の極数・磁束・コイルの巻線仕様を適切に定めることで、低速・可変速運転時も、効率よく発電可能となります。そのため、水量が季節や天候によって変動する場所でも使用されます。
誘導発電機(IMAG)
誘導「電動機」の原理を逆転させ、「発電機」として使う装置です。誘導電動機とは、ACモータの一種です。通常通りモータとして使用する場合、電源から供給される回転磁界よりも若干遅れた速度でロータが回転する、という特徴があります。このロータを外部の力を使って電源の回転磁界より速く回転させると、ステータにエネルギーを送り込むことができ、発電が可能となります。この外部の力として、水流の力を利用したものが、この誘導発電機となります。
上記の説明からわかるように、外部電源(AC電源)を必要とするので、単独運転が難しく、設置場所には制限があります。
また、水車の回転速度が変動すると、それに伴って出力電圧や周波数も変動します。誘導発電機はこの変動に敏感で、安定した出力を得るためには回転数が一定であることが求められます。
その一方、シンプルな構造のため、製造コストやメンテナンスコストは抑えられます。このコスト面の利点が、小水力発電システムにおいて非常に有用な点です。安定した水流が得られる場合には、高効率な運用が可能です。
小水力発電機の開発・製造事例
小水力発電機に弊社製品が採用された例を紹介します。
水路に「置く」だけ「持ち運び可能な携帯型小水力発電機」
川や水路に沈めて利用する、可搬型の小水力発電機に、弊社製品が採用されました。成人2名で運搬できるサイズで、装置中心部に設置されたプロペラが、水流によって回転し、その回転運動を発電に利用する仕組みです。簡単に設置できるので、災害時のみならず、既存の電力インフラに頼らないパーソナルかつシンプルな地産地消の独立電源として、多くの場で稼働可能なものです。
プールのろ過装置の電力を補助する「ろ過装置組み込み型小水力発電機」
プールは国の水質基準を満たすために、必ずろ過装置が必要です。このろ過装置内では、当然ながら水の移動が存在します。これをうまく利用して発電できれば、環境に配慮しながらコストダウンも見込めるという観点で、発電機の組み込みが行われた施設があります。その設備に弊社発電機が採用され、実用化された実績があります。
小水力発電機の開発・製造ならユニテックへご相談ください。
この場ではお伝えしきれない採用実績も多数ございます。お困りの際はぜひ一度お声掛けください。必ずお役に立てると確信しております。