高トルクモータ入門|モータのトルクを高める6つの方法

高トルクモータとは

まず、トルクとは何かを考えてみましょう。

トルクというと「よく聞くけど、何を指す言葉なのかイマイチ理解していない」という方もいらっしゃると思います。しかし難しいことは何もなく、「回転する力」と言い換えるとわかりやすいのではないでしょうか。瓶の蓋を開ける、自転車を漕ぐ、ネジを締める。これらは全て「回転する力=トルク」が必要となります。ねじり力と表現してもよいかもしれません。モータはまさに、「回転する」機器です。そのため、モータの特性を表す言葉として、「回転する力=トルク」がよく使われます。

すなわち、「高トルクモータ」とは、「回転する力が大きいモータ」ということになります。

トルクが高いと何ができるのか

モータは基本的に、サイズが大きければトルクも高くなります。

子どもよりも大人のほうが力が強い、自転車よりも自動車のほうが力が強い、ということと同じと考えてください。ごく単純な話です。

ではもし、サイズを変えずに高トルク化が実現できたら?

連続したトルクを高密度で出力できるので、大きなサイズのモータと同じトルク性能を持つことができます。その結果、大きなサイズのモータに取って代わることができ、小型化が実現できます。

スマートフォンも、掃除機も、ドライヤーも、あらゆる機器にモータが使われています。使いやすくするには、部品を小型化し、サイズ・重量を小さくすることが求められます。トルクが高いモータを開発することで、様々な機器の小型化に貢献できます。

モータのトルクを高める6つの方法

1. 磁石の改良

モータは、磁石の引力・反発力を利用して回転しています。このことから、磁石の性質はトルクを決める重要なファクターであることは容易にわかります。

引力・反発力の大きさFは、多くの方の記憶にあると思いますが、「フレミング左手の法則」で求められるものです。コイルに流れる電流をI、コイルの長さをLとすると、F=I×B×Lと表現され、Fの値は、コイルに鎖交する磁束密度Bによって変動することがわかります。磁束密度Bを高めることで引力・反発力が大きくなり、力強い回転=トルクアップにつながります。

磁束密度は、使用する磁石の種類によって変わります。磁石の種類はいろいろあり、例を挙げて説明します。

①磁粉材料による分類

・フェライト
現在主流の磁石。原材料も製造方法も低コストで、汎用性が高い

・ネオジム
もっとも磁力が高い磁石。機械的強度も高い。欠点として錆びやすい点と、高温での使用ができない点がある。80℃程度で熱減磁が発生するため、高温環境では使用できない。

・サマコバ
ネオジに次ぐ磁力を持つ。錆びにくく高温に強い。ネオジムでは使用できない高温環境などで使われる。

②製造方法による分類

・ラバー磁石
磁粉を合成ゴムに混合、成型したもの。カッターやハサミなどで切断、穴あけなどが容易にできる。

・ボンド磁石(プラスチック磁石)
磁粉を樹脂と混合成型したもの。成型機による複雑な形状を作ることができるため、形状自由度の高い設計が可能。

・焼結磁石
磁粉をプレス成形した後、焼き固めたもの。磁粉の比率が高いため、磁力も高くなる。

モータの設計においては、必要とする性能を出力するにはどの磁粉、どの製造法が最適なのか。コストも考慮して決定していきます。 磁束密度向上による影響は、トルク以外にもいろいろあります。詳細は省きますが、コギングトルクの増加による振動の悪化、低速回転制御が不安定になるなどの悪影響ともいえる点があります。

2. エアギャップの極小化

エアギャップとは、磁石とモータコアとの隙間のことです。この隙間を狭くすればするほど、磁力の影響を大きくすることができますので、トルクアップにつながります。

エアギャップの設計は、部品の寸法公差、組付け精度はもちろん、運転中の温度変化や遠心力による各部品の膨張率などを考慮する必要があります。狭くしすぎてしまうと、運転中の膨張でエアギャップがゼロになり、ロータとコアが干渉、回転がストップしてしまうということも起き得るので、慎重な設定が必要です。

3. 巻線の最適化

巻線においてトルクに影響を与えるのは、「コイルの巻数N」と「巻線の太さ」の2つです。巻数Nを増やすことで、コイルの電磁石としての機能(インダクタンス、逆起電力定数Ke)が強くなり、トルクの上昇につながります。

巻線を太くすることで、電気抵抗を減らせますので、同じ電圧でも多くの電流を流すことができるようになります。これにより、トルクを上げることができます。

巻線仕様の最適化は奥が深く、モータコアの形状、コアが入るケースの形状の設計など、巻線が収まるスペースを確保する検討が必要です。さらには、製造工程における巻き方も様々な手法があり、「いかにうまく巻くか」というノウハウを各メーカが持っています。

4. コア材料の改善

巻線が巻き付けられるモータコアは、電磁鋼板と呼ばれる薄い鋼板を積み重ねて作られています。この電磁鋼板は、1枚分の厚みが厚ければ厚いほど渦電流と呼ばれる電流が大きくなる性質があり、これが丸ごと鉄損と呼ばれる損失となります。そのため、可能な限り厚さを薄くして鉄損を減らすのが主流となっています。

また、近年では電磁鋼板に比べ鉄損を減らせるモータコア材料の開発が各社により進められており、透磁率の高い材料採用が鍵となります。透磁率が高ければ、コアの電磁石としての機能が上がり、高トルク化につながります。

5. コア積層高さの増加

コアの積層枚数を多くすることも、トルクアップには有効です。しかし、単純に高さを増やすことはモータのサイズアップにつながってしまいます。これでは意味がありません。各メーカは、モータ外部の寸法を維持したまま内部の設計を工夫することで、一枚でも二枚でも積層枚数を増やす工夫を行っています。

例えば、従来2部品で構成していた箇所を一体成型などで部品点数を減らし、できたスペースをコアの枚数増加に当てるなど。アイデアをいかに生み出すかが技術の進歩を担っています。

6. ギアボックスの使用

ギアボックスを使うという手もあります。モータとギアボックスを一体にすることで、モータ単体より回転数を落とすことにはなりますが、高いトルクが得られます。回転数を考慮した最適設計を行うことが必要です。

高トルクモータの代表的な用途

産業機械

チェーンブロック(ホイスト)

重い荷物を持ち上げ、吊るした状態で移動させる機械です。建設現場や工場などで、材料や金型の運搬に使用されます。重い荷物を上げ下げする機能を実現するために、高トルクモータが使用されています。

溶接ロボット

溶接作業を自動で行うロボットも、高トルクモータが求められます。溶接の仕上がりを美しくするため、溶接位置を高い精度で実現するために、しっかりと固定する力が必要です。この固定力を高トルクで実現しています。

また、作業時間を短くするためにロボットアームの移動速度は速い方が望ましく、速い動きをするためには瞬間的に高いトルクが必要になるため、高トルクモータの需要があります。

自動車産業

バキュームポンプ

自動車のブレーキ機能を構成する機器の一つに、バキュームポンプというものがあります。バキュームポンプによって真空状態を発生させ、それを利用してブレーキ力を生み出す、という仕組みになっています。

従来のガソリン車では、エンジンの駆動力を利用して真空状態を作っていたのですが、ハイブリッド車、電気自動車では、モータの力によって真空状態を作り出しています。真空状態を作り出すには、羽根車を高速・強い力で回転する事が必要ですので、高トルクモータが必要となります。

特装車リフター(昇降機構)

大きな家具・家電、ガズボンベ、土砂などを下ろすために、電動リフトのついたトラックを見たことがあるかと思います。こういった重量物を持ち上げるには、強い力が必要ですので、ここでも高トルクモータが使われます。

ロボティクス

AGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)

近年、倉庫業務がロボットの導入により効率化、省人化が進んでいますが、ここで活躍しているのが荷物を運搬するロボットです。ネコ型の配膳ロボットを飲食チェーン店で見ることも多くなりましたが、この配膳ロボットが、重い荷物を運べるようになった、と考えて頂くとイメージし易いかも知れません。

倉庫で荷物を運搬する用途ですので、軽いものしか運べないのでは役割不足です。重い荷物を乗せても、しっかり車軸を回転させ、移動する力が求められるので、高トルクモータが必要となります。

エネルギー産業

電力遮断器

家庭内にあるブレーカも、電力遮断器の一つです。ショートや、過電流、漏電など、問題を検知した時に電気の通り道を遮る装置です。物理的に電気を遮断する機構にモータが使われますが、このモータに高トルクが求められます。

電力遮断時に重要な事は、いかに早く電気を遮るか。遮断機能がゆっくり動いていては、その間に火花が発生、火事に繋がってしまいます。いかに早く遮断するか、すなわち、いかに早くモータが動くか、が重要になります。俊敏な動きをするために、高トルクが求められます。

断路器

こちらも、電気の通り道を遮る機能を持つものです。電気工事などを行う際などに、確実に電気を止めるために手動で操作します。(遮断器の様に自動で検知して動作するものではない)工事中に電気が間違って流れることに無いように取り付けられています。電力遮断器同様、素早い動きが必要とされます。

医療機器

介護リフト

介護リフトでは、人を持ち上げる力が必要ですので、強い力を持ったモータが求められます。安定した動作を行うためにも、十分な余力のある高トルクモータが必要となります。

循環ポンプ

医療の世界では、様々なポンプが使用されています。薬液を血中に投与するためのポンプ、人工透析のためのポンプ、手術に使われる人工心肺装置に組み込まれた血液循環用ポンプなど。そのどれもが、安定した動作が求められる事は想像に難くないと思います。こういった「安定性」は、ロバスト性、速度応答性が求められますが、その根底として高トルクモータが必須となります。

手術台

手術台には様々な機能が搭載されています。高さを昇降したり、角度を変えたり、機材を設置する台座があったり、その台座が昇降したりといった動きが必要になります。特に、患者が乗る台は重い力がかかりますので、これを昇降するには高トルクモータが必要となります。

遊園地のアトラクション

電動機関車(トラム)

遊園地では、乗り物がたくさんありますが、その動力は基本的にモータです。中でも、電動機関車のような多人数を載せる乗り物が動くには、強い推進力が必要となりますので、やはり高トルクモータが必要となります。

無軌道走行マシン

屋根部分に集電装置が設置され、そこから常に電気が供給されるタイプの乗り物であっても、モータを動力源としています。多人数の載せる乗り物であれば、やはり高トルクモータが求められます。

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